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2019年2月10日 (日)

珠玉の名言

 川(渓流)の職漁師についての本を見つけてさっそく購入。戦後しばらくの間はあちこちに川魚の漁師がいて、アユやヤマメ、イワナなどを旅館や料理屋に売って生計を立てていたとのこと。彼らはただ漁をするだけでなく、魚がいない渓流の上流部や枝沢に魚を移して増殖させてもいたらしい。安定した生計のためには当然のことだったとは思うが、それが結果として川を守り、魚を保護することにもつながっていたんだと、改めて知った次第である。
 
 そういった職漁師の語りの中には、名言と言えるものが数多い。その中で、気に入った言葉を2つ紹介したい。
 
 
 
「絶対合わせるな」
 
 イワナ釣りに際しての名言である。
 
 川の流れの急なところでは誰でも釣れる。流れの緩やかなところ(渕など)では、魚が群れているのが見えるが、下手な釣り方をすれば魚を驚かせてしまい、すぐに釣れなくなってしまう。そのときの釣り方を言ったものである。
 
 釣りでは、魚が鉤を咥えたときに合わせを入れるのが常識である。合わせとは、魚が鉤を咥えたのを感じた次の瞬間に、竿を煽ってしっかりと鉤がかりさせることを言う。それをやってはいけないというのだ。
 
 では、合わせずにどうするのか?
 
 魚が鉤がかりしたら、静かにそっと竿を上げよという。
 経験者ならわかると思うが、魚の反応があれば反射的に合わせてしまうのが釣り人の性。「そうするな」というのは、「素人の釣り師」にはできそうでできない難しい行為なのである。
 
 
 
「イワナはほとんど移動しない」
 
 イワナという魚の習性を知り尽くした名言である。
 
 渓流といえども長い流程を持つ。魚たちはそこを上へ下へと自由に動き回っているかのような想像をしてしまうが、実はそうではないという。特に沢に棲んでいるイワナは、産卵期以外はよほどの事情がない限り大きな移動をすることがないらしい。
 渓流は奥に行けば行くほど生存競争が激しくなる。そういうところにいるイワナたちは、マイ・ホームをしっかりと持っていて、そこで日々の暮らしを営んでいるのだ。そうすることで互いの生活を脅かし合うことを避けているのだろう。
 
 職漁に携わる人たちは、それぞれにテリトリーを持ち、互いに互いのテリトリーを守り合っていた。また、自分のテリトリーの中では、どこそこの川に2日入ったら、次は別の川に何日、その次はまた別の川に何日…というように、ある程度の間を置きながら移動して漁をしていた。
 あたかも沢に棲むイワナと同じような職漁生活を送っていたようで、とても興味深い。
 

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